自作PCではケースに電源ユニットを組み込む。でも電源ユニットってどういう基準で選ぶのが正解なの?という方に向けた話。
電源ユニットとは
電源ユニットの役割は、コンセントから供給する交流のAC100Vを、電子機器で使うための直流電圧に変換するための機器。デスクトップPCでは、電源ユニットからマザーボードやハードディスク、グラフィックボード等のために必要な電圧を取り出しているが、それぞれのコネクタ形状や電圧仕様まで規格が決められている。
この規格はいくつかの種類があるが、タワー型のデスクトップPCで最も一般的なのはATX規格だ。マザーボードの電源仕様を確認して、ATXバージョンXという物に合致した電源を購入すれば、とりあえず動作する物を選ぶことはできる。
因みにノートパソコンや、スマホ、電子タバコなどに使うACアダプタも同じ役割だが、デスクトップPCの電源ユニットと違うのは、その電力量とACアダプタなので取り出せる直流電圧は1種類のみ。機器はその入力電圧から内部で必要となる複数の電圧を作っている。
最低限考慮すべきスペック
一見すると単純な機器なのに、なぜ価格に差があるのか疑問に思った方もいるだろう。出力電力の違いで値差があるのは何となくわかるものの、同じ電力でも販売価格に幅がある。これは電力以外の仕様が関係している。
- 1. ケーブルの出し方
-
電源ユニットから各部に接続するためのケーブルが、取り外せるタイプをプラグイン、或いはフルモジュラーといい、一部だけの物はセミプラグインという。フルモジュラーの電源なら、必要なケーブルだけを装着できるため、ケース内がスッキリして人気があるが、価格が高くなりがちなポイントの1つ。
- 2. 採用しているコンデンサ
-
コンデンサとは電気を貯めるための部品だが、電源ユニット内部ではAC100Vから直流電圧に変換する際に、安定した直流電圧を生成するために使われる重要な部品だ。この部品には寿命があり、しかも熱が高くなると寿命が加速する特徴がある。このため使用している全てのコンデンサは日本製の105℃品が採用されていると安心だ。セールスポイントの1つにしている場合も多いので是非チェックを。
- 3. 効率(80PLUS)
-
電源ユニットにおける効率とは、コンセントのAC100Vから得られたエネルギーを、どれだけ維持したまま出力側へ届けられるかという意味。AC100Vを入力してから直流電力を出力するまでには様々な回路を通る。これらの回路はそこを通る電流からすれば抵抗になる。その抵抗分と電流が乗じて熱に変換される。つまり本来の入力されたエネルギーが熱に変換されてしまうのだ。これを損失と言うが、これがどの程度小さくできるかは電源ユニットの設計に依存する。
80PLUSはそれを分かりやすくした指標だ。以下の表を見てほしい。
例えば、80PLUS Goldの認証を取得した電源は、その電源に掛かる負荷電力が50%の時に効率が90%であることを示している。例えばこの認証を取得した600Wの電源を負荷率50%で使った時には、消費電力が300Wの場合にコンセントから給電される電力は330Wの電力を必要とするという意味だ。つまりその差分30Wが熱に変換されることを意味している。
一日のうちに数時間したパソコンの電源を入れていないのであれば、消費電力はさほど気にする必要は無いが、テレワークなどで毎日、丸一日電源を入れているケースではバカにならない電力量となる。
影の主役に陽を当てる
上記で説明した仕様の他、様々なものがあるが、肝心なのは自分で作ったパソコンが通常利用時にどの程度の消費電力で動いているのかという事を把握すること。例えば平均すると300Wくらいで動作しているなら、600Wの電源を購入する。これを知るためにワットチェッカーを購入してみるのも良い。Amazonなんかで安価に売っているので気軽に買えるはずだ。
電源ユニットは地味な機器だが、電気代を左右する大変重要な存在だ。自作PCというとCPUやグラボばかりに目が行きがちだが、この様な視点で拘って影の主役とも言える物を選ぶのもまた、自己満足の世界だとしても自作PCの楽しいところだ。